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2014年長野県神城断層地震に関連する活断層露頭の調査

2014年12月02日

2014年長野県神城断層地震に関連する活断層露頭の調査

2014年11月22日に発生した長野県神城断層地震について,関連すると思われる活断層露頭の調査を,11月29-30日に行った.

調査者:小林健太,香取拓馬,粉川真人,中村佳博

今回の地震に伴って出現した地表地震断層の北端付近(白馬村北城)は,低位段丘,沖積低地や扇状地の堆積物に広く被われている.その中で城山周辺地域(南北400m×東西200m)では,鮮新世岩戸山層(安山岩質溶岩・火砕岩)が,孤立して高所に分布する.そのさらに上位には,中位段丘堆積物(約10万~数万年前?)がごく狭く分布する.

2014年長野県神城断層地震に関連する活断層露頭の調査

活断層露頭は,中位段丘堆積物の「上に」,南東に低角で傾斜する断層で境され,変形・変質を被った凝灰角礫岩(岩戸山層)が乗っている.低角断層直下の段丘礫は.これとほぼ平行に再配列している.低角断層は下方(南東側)で,南東に高角で傾斜する別の断層に切断される.高角断層直下(北西側)の段丘礫は.これとほぼ平行に再配列している.高角断層の上盤(南東)側は,凝灰角礫岩が連続して分布する.つまり,低角断層,高角断層とも,中位段丘面の形成より後まで運動した活断層と判断される.

2014年長野県神城断層地震に関連する活断層露頭の調査

低角断層直上は,凝灰角礫岩を源岩とする断層ガウジ,断層角礫である.灰緑色,黒色,灰色,赤褐色(風化色)などを呈する.Y-P-R1ファブリックが露頭でも観察でき,上盤北西(逆断層)の剪断センスが判定できる.低角断層,高角断層やそれに並走する小断層面上の条線は,ほとんどが左横ずれ成分を伴う逆断層運動を示唆するものであった.

2014年長野県神城断層地震に関連する活断層露頭の調査

露頭から下方を見下ろすと,既に多くの報告がある地表地震断層が,南西方に連続している様子が観られる.この地表地震断層は傾斜角から考えて,露頭が存在する高度まで連続するならば,露頭より約10m北西の斜面にある鞍部を通ると考えられる.

2014年長野県神城断層地震に関連する活断層露頭の調査

我々が現地に到着した時点(11月29日12時)の露出状況.半日かけて断層露頭を整備した.整備作業より前の状態で,斜面の崩壊や倒木は観られたものの,今回の地震に伴うと断定できる変位の痕跡は,斜面上には認められなかった.

新第三系中の地質構造,地質断層(姫川断層),地表地震断層,余震分布は,震源域を通じてともに北東へ延び,互いに良く一致している.ところが活断層(神城断層)については,震源域の北部(北城付近)では北東から北西,北へと向きを変え,他の構造と一致していない.今回報告した露頭の存在から,活断層でも北東へ一様に延びるものが存在することが明らかとなった.