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信濃川中流域の調査報告

2011年08月12日

平成23年7月豪雨の調査速報

災害・復興科学研究所 複合災害科学部門
安田 浩保

はじめに

新潟県内の信濃川流域、阿賀野川流域で発生した豪雨災害について災害発生直後の8月1日から20日にかけてのべ7日にわたり現地調査を実施した。重点的に調査を行ったのは五十嵐川の支川である鹿熊川(かくまがわ)、刈谷田川の支川である塩谷川、および十日町を貫流する晒川と田川である。以下では、被災特徴が共通する鹿熊川と塩谷川について述べる。

五十嵐川と鹿熊川

五十嵐川では三条市下田付近の右側に緩やかに湾曲する箇所で200-300mにわたり河岸決壊を起因とする破堤が生じた。これが今回の水害における五十嵐川での最大の被害箇所で、五十嵐川の右岸側の住宅地と水田で浸水被害が生じた。五十嵐川流域の浸水被害の約60%、浸水家屋数の約90%がこの決壊地点を原因として発生したものである。

鹿熊川は谷底平野内を縫うように流れる典型的な中山間地の河川である。今回の豪雨では、五十嵐川との合流点から8km以上までの上流区間の間で谷幅全幅で洪水流が流下して、この沿川の住宅地や水田のほとんどが浸水した。河岸護岸の被災箇所のほとんどは 、曲率の大きな湾曲部であった。このように河岸決壊をした箇所では、堤内地に数10cmの粒経の礫が広く拡散していた。

刈谷田川と塩谷川

刈谷田川は平成16年7月の豪雨時には市街地で破堤して甚大な被害を発生している。今回の豪雨は前回の豪雨と同程度かそれ以上に規模に達していたにもかかわらず、前回の豪雨を受けて設置された遊水池が効果を発揮するなどして堤外地に対しては目立った被害を及ぼしていない。

塩谷川は前出の鹿熊川と同様に谷底平野内を流れる河川で、多数の湾曲部が存在していることが特徴としてあげられる。今回の豪雨における被災の特徴はこれらの湾曲部のほとんどで河岸決壊ないしは破堤を生じ、堤内地の住宅や農地に浸水被害をもたらしている。なかには湾曲部の外岸と内岸の両方で河岸決壊を生じている箇所が数カ所あった。このような縦断方向に断続的な河岸決壊が生じた理由には、谷底低地のための最大水面幅の拘束が考えられる。

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写真-1 湾曲部の内岸の河岸決壊と今回の洪水で形成されたと考えられるポイントバー(塩谷川、下塩地区付近)
写真-1 湾曲部の内岸の河岸決壊と今回の洪水で形成されたと考えられる
ポイントバー(塩谷川、下塩地区付近)
写真-2 湾曲部外岸の破堤断面(塩谷川、人面地区付近)
写真-2 湾曲部外岸の破堤断面(塩谷川、人面地区付近)

まとめ

鹿熊川と塩谷川は谷底平野を流れるという共通点を持ち、両川では非常に類似した被害が発生してる。今後は、谷底低地の河川が有する本来的な特性と下流域への流量負担の両者の絶妙な均衡をはかった復旧と改修が望まれる。

担当:複合災害科学部門 准教授 安田浩保 hiro@gs.niigata-u.ac.jp