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2013年7月 新潟県内の豪雨被害(第1報)

2013年08月01日

2013年7月29日~30日にかけて,新潟県の中越地域では,直線上に分布した強い積乱雲による集中的な降雨が発生した.レーダ解析による時間雨量では,100mmを超えていたものと推定され,降雨の集中域である長岡市乙吉町や長岡市(旧栃尾市)森上地区などで浸水被害や斜面崩壊による土砂災害が発生した.

2013年7月31日,文責:卜部厚志・鈴木幸治.

乙吉地区の被害(概要)

降雨の集中による集落内河川の氾濫による被害であった.斜面崩壊は,集落内や集落より上流部で発生している.上流部のものはいずれも地すべり地形内の表層崩壊であり,地形により水が集中して崩壊が発生した.河道を閉塞するような崩壊は(集落近傍の上流部では)見られなかった.

課題:
①洪水流は谷地形内を直線的に流下している.また,集落内の道路と河川が並行しており,避難する際のルート選択が課題となる.
②避難準備情報の発令が遅かった:乙吉川はオンラインによる水位観測はなされていない(県内でたくさんある規模の小河川のため).大河川では,水位情報による避難準備情報の発令が設定されているが,水位情報のない河川での同情報の発令が課題となる.Xバンドレーダ,気象庁のレーダ情報では,時間降雨が100mmに達することが予測されていたため,レーダ情報を併用した情報発令の構築が課題となる.

乙吉地区の被害(概要写真)

乙吉地区は,長岡市街部の東方に位置する.地区内の乙吉川の氾濫により約90棟の浸水(約80棟の床上浸水)被害が発生した.

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写真1 乙吉川下流部(集落内での下流部)の被害状況
写真1 乙吉川下流部(集落内での下流部)の被害状況
写真2 乙吉川下流部(集落内での下流部)の水田の被害状況
写真2 乙吉川下流部(集落内での下流部)の水田の被害状況
写真3  乙吉川下流部(集落内での下流部)の被害状況:浸水深50-60cm(道路面から),床下浸水(ぎりぎり床上浸水)
写真3  乙吉川下流部(集落内での下流部)の被害状況:浸水深50-60cm(道路面から),床下浸水(ぎりぎり床上浸水)
写真4  集落内(集落内での乙吉川の下流部)の被害状況:浸水深110-120cm(道路面から),床上浸水50-60cm
写真4  集落内(集落内での乙吉川の下流部)の被害状況:浸水深110-120cm(道路面から),床上浸水50-60cm
写真5  集落中央部(集落内での乙吉川の中流部)の被害状況:浸水深190-200cm(道路面から塞き上げ),倉庫の倒壊,水圧によるコンクリート壁の移動あり
写真5  集落中央部(集落内での乙吉川の中流部)の被害状況:浸水深190-200cm(道路面から塞き上げ),倉庫の倒壊,水圧によるコンクリート壁の移動あり
写真6  集落中央部(集落内での乙吉川の中流部)の被害状況:浸水深150-160cm(道路面から),床上浸水90-100cm程度,車両の流出あり
写真7  集落中央部(集落内での乙吉川の中流部)の被害状況:浸水深150-160cm(道路面から),床上浸水90-100cm程度,車両の流出あり
写真6,7  集落中央部(集落内での乙吉川の中流部)の被害状況:浸水深150-160cm(道路面から),床上浸水90-100cm程度,車両の流出あり
写真8 集落中央部の斜面崩壊: 谷の縁辺部では比高が高いため,浸水被害は軽微であるが,住宅裏の斜面が表層崩壊している.
写真8 集落中央部の斜面崩壊: 谷の縁辺部では比高が高いため,浸水被害は軽微であるが,住宅裏の斜面が表層崩壊している.
写真9  集落内(集落内での乙吉川の上流部)の被害状況:集落内での乙吉川は蛇行しているが,洪水は谷地形内を直線的に流下している.
写真9  集落内(集落内での乙吉川の上流部)の被害状況:集落内での乙吉川は蛇行しているが,洪水は谷地形内を直線的に流下している.
写真10 集落の最上流部(集落内での乙吉川の上流部)の被害状況:浸水深180cm(道路面から),住居としては使用していなかった
写真10 集落の最上流部(集落内での乙吉川の上流部)の被害状況:浸水深180cm(道路面から),住居としては使用していなかった
写真11 集落より上流の乙吉川の状況: 流路から林道部分にあふれて流下していた様子.巨礫の運搬はない.
写真11 集落より上流の乙吉川の状況: 流路から林道部分にあふれて流下していた様子.巨礫の運搬はない.
写真1 乙吉川下流部(集落内での下流部)の被害状況
写真12 集落より上流部の斜面崩壊: 古い地すべり地形内の一部が表層崩壊している.地すべりの再活動はない.河川を閉塞するような崩壊は発生していない.

長岡市森上地区の被害

旧栃尾市の森上地区は,中越地域の中山間地域(標高200-300m程度の山地)に位置し,刈谷田川支流の西谷川左岸部にある.降雨の集中域は,西谷川沿いの斜面崩壊の崩壊分布から見ると3-4km程度の狭い範囲に限られ,この集中域に森上地区があった.西谷川沿いの斜面崩壊は,地すべり地形内の表層崩壊が多く,地すべり地形によって降水が集中し,崩壊が発生したものと推定できる.森上地区の住宅被害箇所以外でも,表層崩壊が多発している.

写真13 住宅を巻き込んだ表層崩壊の崩壊発生部
写真13 住宅を巻き込んだ表層崩壊の崩壊発生部
写真14 崩壊土砂の主体は地すべり地形の低い部分を流下したが,流動性が高かったため,やや高い位置にある住宅(写真奥)を巻き込んでいる.
写真14 崩壊土砂の主体は地すべり地形の低い部分を流下したが,流動性が高かったため,やや高い位置にある住宅(写真奥)を巻き込んでいる.
写真15 住宅は地すべり地形の底部から比高5m程度の高い部分に位置しているが,流動性の高い土砂をかぶり一部損壊している.
写真15 住宅は地すべり地形の底部から比高5m程度の高い部分に位置しているが,流動性の高い土砂をかぶり一部損壊している.
写真16 移動土砂末端部での住宅の倒壊.住宅は段丘上に位置しているが,地すべり地形からの流出土砂によって倒壊している.
写真16 移動土砂末端部での住宅の倒壊.住宅は段丘上に位置しているが,地すべり地形からの流出土砂によって倒壊している.
写真17 棚田の崩壊: 渓岸の崩壊による農地被害もあるが,降水が畦畔を越流したことによる畦畔の崩壊も多発している.中越地震の被災地でもあり,棚田(農地)復旧への支援が必要.
写真17 棚田の崩壊: 渓岸の崩壊による農地被害もあるが,降水が畦畔を越流したことによる畦畔の崩壊も多発している.中越地震の被災地でもあり,棚田(農地)復旧への支援が必要.