2011年04月12日
2011年3月12日の長野県北部地震で発生した斜面崩壊・地すべり災害について
※ 詳細はこちらのPDFファイルをご覧ください
- 【調査概要】
- 平成23年3月12日午前3時59分に長野県・新潟県境付近で発生した地震(Mj=6.7)により,新潟県十日町市,津南町,および長野県栄村で地すべり,斜面崩壊が発生した。新潟大学 災害・復興科学研究所 複合災害部門 災害機構解析分野では,平成23年4月10日および4月11日に以下の箇所にて現地踏査を実施した。なお,今後の調査結果により,数値等が変更する場合がある。
- 【調査者】
- 丸井英明,古谷 元,王 純祥(以上,新潟大学(全期間)),木村和弘,内川義行,福山泰治郎(以上,信州大学(4月11日)),松尾 眞(京都精華大学(4月11日))
- 【調査箇所】
- 調査日および調査箇所(図1参照)は以下の通りである。
①新潟県十日町市松之山区赤倉(大畑地区)
②新潟県十日町市松之山区坪野(下布川地区)
③新潟県十日町市松之山区中尾
④新潟県津南町辰ノ口トヤ沢
⑤長野県栄村北信(中条川支流東入沢川)
⑥長野県栄村北信(青倉地区)
⑦長野県栄村北信(横倉地区)
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- ①新潟県十日町市松之山区赤倉(大畑地区)
- 崩壊の滑落崖の幅は40m程度であり,崩壊の長さは70~80m,高さは30m程度と推定される。崩壊土砂の移動方向は,おおよそN30゜Eである。崩壊土砂は,神社の背後から発生し,東川の流路を閉塞した。
- ②新潟県十日町市松之山区坪野(下布川地区)
- 変状の幅は40m,クラックの開口は最大で40cm,段差は30~40cmである。長さは積雪により確認できなかったが地すべりの可能性が高い。北側の路肩部には集水マスがあり,多量の融雪水が流入していた。この変状箇所の背後には,地形図上で比較的大きな集水域が認められる。今後,融雪に起因する再滑動の可能性も考えられることより,変状の進行について監視することが望ましい。
- ③新潟県十日町市松之山区中尾
- 地すべりの長さは約200m,幅80mである。滑落崖の高さは10m程度である。古い地すべりが地震により再滑動したものと推定され,末端は東川の支流まで達し,可動閉塞が生じている。滑落崖の状況より,基岩に相当する箇所はシルト岩,また一部に砂岩で構成されている。これらはいずれも固結度が低い。
- ④新潟県津南町辰ノ口トヤ沢
- 崩壊の滑落崖は,稜線沿いに幅100m程度で切り立った形状を呈する。崩壊土層深は深くなく,崩壊域の長さは約200m程度である。滑落崖の色調は赤~黄褐色であり,風化が進んでいたものと思われる。崩壊土砂は比較的,長距離移動(約700m)しており,その末端は国道353号線を越えて船繁川まで達した。この土砂による可動閉塞は認められない。国道付近での堆積域の幅は約150mである。
- ⑤長野県栄村北信(中条川支流東入沢川)
- 東入沢川では,比較的大きな崩壊は少なくとも2箇所発生している。写真の崩壊は,そのうちのひとつである。他の崩壊は,写真の崩壊の上流部になり,尾根の陰になる。写真の崩壊規模は長さ,200m,幅100m程度と思われる。当該地では,少なくとも崩壊土塊が雪とともに流下したものと推察される。流下した崩壊土砂は,安山岩の岩塊や巨礫の他,風化砕屑物で構成される。この崩壊により,水道用の用水路が破断した。末端付近では土砂が約10m堆積した。
- ⑥長野県栄村北信(青倉地区)
- 当該地内では,道路の舗装面に多数の亀裂の他,圧縮による舗装面の捲り上がり,側溝部で開口(幅50cm,段差20cm程度),および架線の不自然な緩みと張りが認められる。地震による地すべりの可能性が高い。3月末に積雪が観測されており,雪面上に斜面縦断方向に明瞭な亀裂が認められることより,地すべり滑動が継続している可能性が高い。
- ⑦長野県栄村北信(横倉地区)
- 国道脇の集落へ下る測道周辺で変状が発生している。この測道は,現在の国道の施工に関連して多少なり盛土が為された可能性がある。国道脇の測道では,路面上に開口亀裂が発生している他,路肩の緩みやずり落ちが認められる。法面ではすべりが発生しており,崩壊土砂の一部は水田へ流入している。崩壊,変状の範囲は,約100mである。