2022年8月17日
2022年8月下越豪雨の被害調査報告(2)
災害・復興科学研究所:河島克久・西井稜子・松元高峰・渡部 俊
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川部地区の現地調査による災害の要点
- ・山裾から少し離れた自然堤防の微高地上に立地する川部地区では,浸水や土砂の堆積による家屋被害は認められたものの,赤坂川から流出した礫や流木は田んぼに広がって堆積して,川部地区までは到達しなかったため,家屋の全壊・半壊というような被害は発生しなかった.
- ・1967(昭和42)年8月に発生した羽越水害の際には,荒川の氾濫によって川部地区は広範囲に浸水した.今回の豪雨による浸水は荒川右岸の支谷の氾濫によるものであり,浸水域面積・浸水深ともに1967年8月の羽越水害時よりも小さかった.
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数字は地上写真の撮影地点番号.
画面左奥には,赤坂川から流れ出して田んぼに堆積した土砂・流木が見えている.
画面手前に見える赤坂川の本来の流路は山裾に沿って右斜め上へと延びているが,土砂や流木を伴った流れは川部地区の方へ向かって直進し,田んぼに広く堆積物を残した.
高野川から流出した土砂や流木が,南西から北西方向にかけての田んぼに広く堆積している.
不知庵門前のお地蔵様の浸水状況(55 cm).
浸水深58 cm,堆積物層厚2 cm.
川部地区の中では赤坂川に最も近い位置にある倉庫.浸水深102 cm,堆積物層厚7 cm.
大山祇神社の社殿の浸水状況(浸水深80 cm,堆積物層厚14 cm).
消防機械器具置場の浸水状況(浸水深92 cm,堆積物層厚2 cm ).
川部地区中央部にある「城口のせせらぎ公園」の看板には,1967(昭和42)年8月に発生した羽越水害の際の浸水深(水色の矢印)を示す表示板が取り付けられている.
この地点のすぐ横の建物で計測した,今回の豪雨による浸水深を赤い矢印で示す.今回の浸水深は羽越水害時の浸水深よりも約90 cm低い.荒川本流が決壊・氾濫した羽越水害の被害の大きさが窺える.
ビニールハウスに認められる浸水の痕跡(浸水深37 cm,堆積物層厚1 cm ).
高野川から流れ出て田んぼに堆積した流木.
高野川の流木の場合,スギなどの針葉樹よりも広葉樹の流木がかなり多かった.また写真のように根のついた幹も多い.
このように樹皮がほとんど剥がれておらず,枝や葉がついた広葉樹の流木が撮影地点近傍でいくつも確認された.樹皮が剥がれずに残っているということから,これらの流木は上流部から長い距離を運ばれてきたのではなく,もともと撮影地点に近い場所に生えていたものと推定される.
写真奥に見えている崩壊した河岸斜面には,この流木と同じ樹種と思われる広葉樹が倒れているので,その斜面が供給源である可能性がある.