わが国の積雪地域の山岳地帯には,夏季にも融解しきらない孤立した残雪である雪渓が数多く存在する.この雪渓は,消耗過程において構造的に不安定化し,自然にもしくは人間の荷重などの外的要因によって大規模に崩壊することがある.登山や山菜取りなどの目的で入山した人がこの崩壊にまきこまれて死傷することがあるが,この災害をここでは「雪渓崩落災害」と呼ぶ. 雪渓の崩壊によって発生する災害には「ブロック雪崩災害」の範疇に入る事例もあるため,今回は被災時における崩壊雪塊の運動形態に着目し,両者を区別した.すなわち,雪塊が斜面を転がり落ちる過程で人を死傷させた事例はブロック雪崩災害とし,雪渓崩落災害には含めないこととした.
荒沢岳西本城沢 で発生した 雪渓崩落災害
雪渓崩落災害 の被災形態
夏期における 雪崩涵養型雪渓 の消耗・崩壊過程