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下越豪雨の被害調査報告(1)

2022年8月11日

2022年8月下越豪雨の被害調査報告(1)

災害・復興科学研究所:卜部厚志・片岡香子・河島克久・西井稜子・松元高峰・渡部直喜・渡部 俊
大学院自然科学研究科博士後期課程:佐藤和平

本報告のPDFファイルはこちらです.

小岩内地区の現地調査による災害の要点

  • ・家屋被害は,大沢川沿いに集中していた.主に流木や流木閉塞による流路変更に伴う洪水の洗掘によって家屋の全壊,半壊被害がもたらされたと考えられる.大沢川などの河川流域では,浸水や砂の堆積による家屋被害も認められた.
  • ・大沢川を流下した土砂は,極粗粒砂(粒径2 mm程度)までの砂が主体であり,巨礫は基本的には確認できなかった.谷出口付近において,わずかに確認された巨礫は,元々堰堤の下流側の谷に堆積していたものが,擁壁工下部から洗掘され流下した可能性がある.
  • ・洗掘された家屋基礎の下部では,大沢川の小規模な扇状地の堆積物(礫)が確認された.また,堰堤下流の河床(擁壁工下部)では巨礫が確認された.したがって,大沢川では過去に巨礫を含む土石流が発生していたと考えられる.
  • ・今回の災害によって発生した大沢川での土砂流出様式の詳細については,今後の現地調査が必要である.

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図1 村上市小岩内地区周辺(地理院地図を基に作成)
図2 2022年8月2日〜3日の降雨状況
新潟県の雨量観測所(村上市川部)のデータを基に作成.8月4日2:00,3:00は欠損.
図3 小岩内地区(地理院地図を基に作成)
数字は地上写真の撮影地点番号.
ドローン写真1 2022/8/5(撮影方向:南東):小岩内地区全景
撮影地点1 2022/8/5(撮影方向:北東)
撮影地点2 2022/8/5(撮影方向:北東):大沢川下流の状況
河床には,土砂・流木が堆積しており護岸から一部越流している.
撮影地点3 2022/8/5(撮影方向:西)
浸水深105 cm,堆積物層厚95 cm.
撮影地点4 2022/8/8(撮影方向:東)
小岩内地区公会堂前のお地蔵様の浸水状況(約130 cm).
撮影地点5 2022/8/5(撮影方向:東南東)
家屋(1棟)の全壊・流出箇所に堆積した流木.
撮影地点6 2022/8/5(撮影方向:南南東)
全壊・流出した家屋の上流側の建物外壁に浸水の痕跡(浸水深190 cm,堆積物層厚20 cm).
撮影地点7 2022/8/5(撮影方向:北):大沢川の谷出口付近(集落の上流部)
右岸の建物に泥はねの痕跡(床から泥までの高さ480 cm).
撮影地点8 2022/8/5(撮影方向:南):大沢川の調査範囲内で確認できた最大礫径
花崗閃緑岩の巨礫(長径約1~2 m前後)が複数堆積.ただし,礫の供給元は,大沢川の堰堤上流からではなく,堰堤下流の擁壁工下に存在していた礫が今回のイベントで移動したと考えられる.
撮影地点9 2022/8/5(撮影方向:南):表層崩壊(大沢川左岸no.2)
基盤岩は露出しておらず,山麓堆積物もしくは崩積土の崩壊.「大沢川左岸no.1」に近接する表層崩壊(擁壁工終端のすぐ上流).基盤と土層の境界でなく,土層中にすべり面が形成されたと考えられる.
崩壊構成物質の礫種は,主に流紋岩8割,花崗閃緑岩2割であり,粒径は20 cm前後が多く,一部に5 cm前後を示す.基質の土は,黄褐色~茶褐色を呈し,淘汰が悪い.触覚と目視では,基質の粒径はシルト分~中粒砂分が卓越.
すべり面の走向傾斜は,N70E,50Nを示す.
撮影地点10 2022/8/5(撮影方向:南):表層崩壊(大沢川左岸no.1)
基盤岩の釜杭層(粗粒~中粒砂岩)の傾斜は10°以下で,水平に近い地質構造.
撮影地点11 2022/8/5(撮影方向:北東):表層崩壊(大沢川右岸no.1)
釜杭層の砂岩(基盤岩)が露出しており,土層と基盤岩の境界付近がすべり面と推定.上部斜面に分布する樹木の根が露出し,垂れ下がっている.
すべり面の走向傾斜は,N35W,35Sを示す.
撮影地点12 2022/8/5(撮影方向:北東):表層崩壊(大沢川右岸no.2)
撮影地点13 2022/8/5(撮影方向:東):小岩内地区の上流に存在する堰堤
大量の流木が堆積している様子が下流側から窺える.護岸工の背後の洗掘(写真右側)や渓岸の侵食(写真左手前)も認められる.