新潟大学 English

耐震補強研究グループ

平成27年度プロジェクト活動計画

1.研究グループ・テーマ

耐震補強研究グループ
構造物の耐震補強技術の開発

2.研究グループの参加構成員

代 表
加藤大介
メンバー
土井希祐,中村孝也,阿部和久,紅露一寛,QUINAY PHER ERROL BALDE

3.具体的活動内容(平成27年度)

1)活動の中核とするプロジェクト名(テーマ)
「地震動の解析とその設計への応用に関する研究」
2)具体的活動内容(目標・計画)
目標
①「東日本大震災で被災した建物の被害原因の究明」(加藤大介)
②「地震時における鉄骨造体育館の挙動の解析(ゲリラ豪雪時あるいは豪雪+地震時の挙動の予測)(天井材の落下の防止策)」(土井希祐)
③ 柱の崩壊現象を考慮した鉄筋コンクリート建物の耐震性評価」(中村孝也)
④「地震動の位相差が鉄道軌道座屈に及ぼす影響に関する研究」(阿部和久)
⑤「不整形地盤の3次元波動解析のための高効率境界要素解析法の開発」(紅露一寛)
⑥ 都市地震応答解析への「断層‐サイト解析」フレームワークの適用(QUINAY)
計画
①「日本の新しい耐震設計法は十分機能していると考えられている。しかしながら,地震被害が発生するそのたび毎にその問題点が浮き彫りになっている。新潟県中越地震や中越沖地震においても同様で,RC造柱部材の破壊形式の評価法が不十分であることがわかっている。さらに,昨年の東日本大震災での建物被害を検討した結果,同様の問題が浮き彫りになった。本プロジェクトでは東日本大震災で被災した建物の被害原因の究明を行う。
② 新潟県のような豪雪地域においては,スパンの大きい鉄骨造体育館に対する豪雪対策が必要である。また,豪雪時に地震を受けるような複合災害についても想定しておかなければならない。さらに,中越地震,中越沖地震,長野県北部を震源とする地震などでは,新潟県の体育館の天井材が落下しており,これらの耐震安全性を確保する手法を開発する。
③ 過去の大地震においては,旧耐震基準で設計された鉄筋コンクリート系建物の層崩壊の被害が数多く生じた。層崩壊の主な原因は柱の脆性破壊による軸力保持能力喪失であると考えられるため,柱の崩壊現象を考慮した地震応答解析によって建物の耐震性評価を行う。
④ 地震動によって鉄道軌道が座屈する事象は,これまでに少なからず発生している.その原因について,これまで定性的議論はなされていたものの,現象論的観点からの検討はなされていない.そこで,軌道軸方向に伸縮を伴う地震波が位相差を伴って進行する場合を対象に,軌道の動的安定性について,理論的検討を加える.また,数値シミュレーションを通して,その発生過程について考察する。
⑤ 地表面の起伏や地下構造の不整形性を有する地盤では,複雑な地震応答を示すことが指摘されている.これらの不整形性に起因する複雑な地震動応答の発生メカニズムの解明を効率よく進めることを目的として,wavelet基底を用いた境界要素地震動解析法の開発と実用化に取り組む.また,当該解析法を用いて,不整形地盤の地震動応答解析に取り組む。
⑥ 本研究では、昨年度に開発した「断層‐サイト解析」フレームワークを、観測データとシナリオ地震を対象とした解析に適用する。地殻と地盤の高解像度モデルを使用することの利点に重点を置いて、ケーススタディを実施する。シミュレーションコードの有効性は、大規模な並列コンピューティング環境の下で確認する。解析結果は、仮想都市内の構造物モデルの応答解析のための入力として使用する。

4.平成27年度のグループ(若しくは分野別)活動計画スケジュール

  • ① 昨年度の研究結果に基づき,東日本大震災で被災した4棟のRC造学校建物の被害原因を詳細に究明する。これらの4棟は,L型建物のためにねじれ振動が励起されたことが被害の原因と思われるもの,耐震補強途中であったために被害を受けたと思われるもの,耐震壁が1階で抜けているいわゆる壁抜け柱が存在することが被害の原因と思われるもの,および,袖壁付き柱の被害が建物の被害の原因でると思われるもの,の4棟であり,いずれも学術的に極めて興味深い建物である。これに加えて,本件度はゲリラ豪雪を念頭に置いたRC造の屋根構造の対積雪性能の検討を開始する。
  • ② 新潟県中越地震や中越沖地震における鉄骨造体育館の調査結果はまとまっている。これらのデータを基に昨年度は豪雪時に地震が起こることを想定した弾性振動解析によるシミュレーションを行った。また,地震時における体育館の振動制御機構開発のための基礎的な部材実験を行った。本年度は,弾塑性振動解析により東日本大震災や長野県北部を震源とする地震で被害を受けた調査済み建物の被害要因のより詳細な把握を行とともに,振動制御機構開発のための部材実験を継続し,豪雪地に建つ鉄骨造体育館の挙動予測および天井落下防止対策への知見の提供を目指す。
  • ③ 過去の部材実験によって,鉄筋コンクリート柱のせん断破壊に伴う軸力保持能力喪失に関する多くのデータが得られている。それらを利用して柱の崩壊現象を精密に考慮できる地震応答解析手法の開発を行う。また,国内都市の中心部には旧耐震基準による中低層建物が多く存在するが,現状ではそれらの耐震性が明らかになっていないため,地震応答解析によって個別建物の耐震性の概要を評価し,都市の安全性評価に取り組む。
  • ④ 昨年度までは3次元地盤と無限周期構造物との連成系を対象に,入射波動の位相差が地盤・構造物連成系の共振応答に及ぼす影響について調べ,その応答特性を明らかにした.本年度は,同様に位相差を伴う地震波による鉄道軌道座屈の発生メカニズムについて理論的検討を行い,さらに数値シミュレーションを通して現行の軌道設計・管理基準の妥当性を検証する。
  • ⑤ 平成27年度は,wavelet基底を用いた境界要素地震動解析法を対象に,計算の並列化による当該解析法の計算時間の短縮に取り組む.また,当該手法を用いて,不整形地盤の地震動応答解析に取り組む。
  • ⑥ 今年度は最初の3ヶ月間に観測地震とシナリオ地震のデータを収集する。同時に、関連研究の文献調査を行う。次の6ヶ月間にシミュレーションデータセットと解析コードを準備する。その後、大規模な並列コンピューティング環境の下で解析を行う。得られた結果は論文として学会誌に投稿する。