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浸透制御研究グループ

平成27年度プロジェクト活動計画

1.研究グループ・テーマ

浸透制御研究グループ
斜面地盤の浸透制御技術の開発

2.研究グループの参加構成員

課題①:森井俊広,課題②:鈴木哲也,課題③:安田浩保,
課題④:泉宮尊司,課題⑤:保坂吉則,課題⑥:河合隆行

3.具体的活動内容(平成27年度)

1)活動の中核とするプロジェクト名(テーマ)
課題① 「浸透制御工法を導入した斜面地盤の減災技術の開発」
課題② 「中山間地産業基盤施設の健全度診断とそれに基づく減災技術の開発」
課題③ 「新潟平野における津波被害の推定と防災計画」
課題④ 「水象災害のリスク評価ならびに被害解析に基づいた減災対策の策定」
課題⑤ 「住宅・宅地の液状化被害に対する土地条件を考慮した減災技術の開発」
課題⑥ 「地下流水音を用いた簡易地下水探査技術の開発」
2)具体的活動内容(目標・計画)
課題①「浸透制御工法を導入した斜面地盤の減災技術の開発」
目標
キャピラリー・バリア(CB)は,砂層とその下に礫層を重ねた単純な土層をいう。砂と礫の不飽和水分特性の相対的な違いにより,上部から浸潤してきた土中水は両層の境界面で遮断・保水され,境界面が傾斜していると保水された土中水は境界面に沿って流下し排水される。自然材料のみで構成される非常にシンプルな地盤層システムであるが,斜面の安定化工法や廃棄物の表面被覆工としての利用など,さまざまな適用可能性をもつ。本研究では,この優れた雨水遮断・排水機能と,自然材料であるため極めて長期にわたって機能が維持される利点を活かして,傾斜CBを表面被覆層と底部排水層に敷設した盛土を提案し,放射性汚染土壌および極低レベル放射性廃棄物の貯蔵保管工法の展開を図る。このため,試験盛土を造成し野外条件下でのCBの機能を明らかにするとともに,長期供用条件での動的および水理学的安定性を評価する。
計画
(1) 盛土の施工法・品質管理法の提示と長期供用性の実証:前々年度に造成したCB試験盛土において,引き続き,降雨浸潤状況およびCB層による浸潤水の遮断機能を計測し定量評価を行う。合わせて,豪雨を想定した地表散水実験を実施し,CB機能の回復機能を評価する。
(2) 限界長の定量化:CB土層の遮水性能は限界長によって決まる。10m長さの室内土槽試験により,この限界長の発現メカニズムを探る。
(3) 盛土表面における植生被覆効果の定量化:CB層の浸潤水遮断機能は,地表面から流入してくる浸潤フラックスが少ないほど,より良好に発揮される。降雨浸潤量は,地表面植生によりかなり低下することが知られており,その効果を,土中水分量の長期モニターにより明らかにする。
課題②「中山間地産業基盤施設の健全度診断とそれに基づく減災技術の開発」
目標
大規模地震災害に代表される複合災害では,広域的に基盤施設が損傷を受けるとともに早期の復旧・復興には損傷施設の健全度診断技術の確立が不可欠である。本課題では,ダムなどの貯水施設を対象に非破壊計測による健全度診断法を確立することを目的とする。
計画
平成23年度~26年度は,東日本大震災で被災した損傷ため池(ダムを含む)を対象に被災特性を踏査と物理探査手法による損傷度診断法の構築を試みた。平成27年度は,既往の研究を踏まえて,既存施設に蓄積された構造損傷の微視的な特性評価を非破壊検査手法を駆使した定量化を試みる。
課題③「新潟平野における津波被害の推定と防災計画」
目標
新潟平野は海岸線に沿って砂丘が発達しているために津波が海岸から侵入してくる危険性は極めて低い。その一方で,平野全体の標高は極めて低いうえ,高潮は想定外のために堤防高が低く,河道に沿って侵入した津波に対しては非常に脆弱な状態にある。東北大震災を経験した現在,新潟平野における津波被害の推定は急務である。
計画
河川を遡上する津波に着目して新潟平野における津波被害の推定を行う。得られた被害推定に基づき,堤防や水門などの補強対策法,避難計画を根幹としたソフト的対策を打ち出す。
課題④「水象災害のリスク評価ならびに被害解析に基づいた減災対策の策定」
目標
平成23年に発生した東北地方太平洋沖地震津波による巨大災害や同年に発生した新潟・福島県豪雨災害は,これまでの想定を上回る規模の自然現象によって発生した。このように近年では,防護目標を上回る外力による災害がやや多頻度で発生している。そこで本研究では,津波・高波・洪水等の水象災害のリスクを確率論的に評価し,それと同時にこれまでの津波および洪水災害の被害の特徴を分析し,防災計画・減災対策の策定を目標とする。
計画
日本海東縁部における地震・津波災害のリスク評価,並びに東北地方太平洋沖地震津波による家屋の被害評価,地殻変位データに基づいた津波波源のリアルタイム予測,およびレベル1・レベル2津波に対する日本海沿岸域の防災・減災対策を策定する。
課題⑤「住宅・宅地の液状化被害に対する土地条件を考慮した減災技術の開発」
目標
戸建て住宅とライフラインは液状化対策が進んでおらず,近年の地震における被害は市民生活に大きな影響を及ぼした。本課題では,地盤防災上の危険度が高い土地条件地域へ拡大が進む宅地の表層地盤のリスクを再評価し,宅地内における小規模インフラや戸建住宅の液状化時の挙動を踏まえた対策技術の提案を目標とする。
計画
住宅基礎地盤やライフライン埋戻し土の液状化挙動に関する模型実験の成果を踏まえた効果的な防災・減災技術の提案を行い,実スケールの解析による妥当性の検証を行う。また,越後平野の表層地盤を事例に,ボーリングデータベースに基づくリスク評価を行い,土地条件や地盤情報に基づく最適な減災方策の提案を行う。
課題⑥「地下流水音を用いた簡易地下水探査技術の開発」
目標
災害発生後には,汚染廃棄物の中間貯蔵場所の決定や産業基盤施設の健康度査定などの基礎データとして,現地浅層地下水の挙動を知る必要がある。また,地下水挙動の簡易把握は,山地斜面の表層崩壊発生地点の予測にも有益である。そこで,飽和-不飽和境界面付近で発生する曝気音を用いておおよその浅層地下水位や水みち位置を推定する,新しい地下水環境探査手法の開発を試みる。
計画
地下水情報を地表面から簡易かつ迅速に調査する手法として地下流水音探査法の開発を試み,既存の地盤探査法である地中レーダー法・比抵抗映像法と比較することで,地下流水音データに含まれる物理データを明らかにする。平成27年度は,「複雑な地質を有する災害発生地において地下水位・地下水流量・地下流水音との関係を明らかにするため」に,山地林道・法面にて地中レーダー法および比抵抗映像法を実施し,それらから得られた地中の物性値と地下流水音から得られた音圧・周波数・脈動特性とを比較する。観測は新潟県内の地滑り地を中心として日本各地の災害発生地で実施し,災害機構解析分野との共同観測も計画する。

4.平成27年度のグループ(若しくは分野別)活動計画スケジュール

課題①
2015.4〜12
CB試験盛土への覆土敷設と土中水分の継続計測
2015.8〜9
CB試験盛土における表面散水試験
2015.6〜11
室内大型土槽実験によるCB土層の限界長の計測
2015.4〜2016.2
植生地盤の造成と土中水分の長期計測
課題②
2015.5〜2015.12
新潟県内・現地計測(年5回,1回2日程度で3名参加)
課題③
2015.5〜2016.3
「河川遡上津波の数値モデルの高度化,自然地形に適した境界適合手法の開発
課題④
2015.4〜2016.3
「日本海東縁部における地震・津波災害のリスク評価,並びに東北地方太平洋沖地震津波による家屋の被害評価,地殻変位データに基づいた津波波源のリアルタイム予測,および日本海沿岸域の防災・減災対策を策定する。
課題⑤
2015.4〜2016.1
住宅基礎地盤やライフライン周辺地盤の液状化に対する減災対策工法の提案ととりまとめ
2015.4〜2016.1
宅地の地盤防災を考慮した,ボーリングデータベースによる表層地盤の地震リスク評価のとりまとめ
課題⑥
2015.4〜2016.2
新潟県・長野県・広島県・鳥取県にて地中レーダー・比抵抗映像法・地下流水音による地盤探査の実施