新潟大学 English
ホームニュースニュース 2015年シンポジウム「震災資料・史料保存・災害史研究の融合をめざして」が開催されました

シンポジウム「震災資料・史料保存・災害史研究の融合をめざして」が開催されました

2015年12月17日

シンポジウム「震災資料・史料保存・災害史研究の融合をめざして」が開催されました

※詳細はこちらをご覧下さい。(PDFファイルが開きます)

 戦後70 年になる今年、長岡空襲、阪神淡路大震災、中越地震、東日本大震災、さらに2014 年11 月に起こった長野北部地震地震を中心に、震災資料・史料保存・災害史の研究の融合を目的として、2015 年12 月13 日(日)13:00~17:50 に新潟大学五十嵐キャンパスにおいて公開シンポジウムが開催されました。本シンポジウムの主催は新潟大学災害・復興科学研究所被災者支援研究グループであり、科学研究費基盤研究(S)「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立—東日本大震災を踏まえて」研究グループ、新潟大学人文学部地域文化連携センター、新潟歴史資料救済ネットワーク、新潟史学会の4 団体が共催したものです。

 シンポジウムでは、高橋満氏(福島県立博物館)が「瓦礫を資料に変換する」というテーマで、ふくしま震災遺産保全プロジェクトの枠組み、震災遺産(震災が産み出したもので次世代に伝え遺すべき歴史的資料)についての報告、日下和寿氏(白石市教育委員会生涯学習課)が、「白石市における文化財レスキューとその後」というテーマで、宮城県白石市の東日本大震災以前の文化財調査と東日本大震災後の文化財調査・収集(震災以降、2013 年7 月までのレスキュー89 回、報告書『白石市の文化財レスキュー』刊行)の報告、福嶋紀子氏(長野被災 建物・史料救援ネットワーク)が、「長野県北部地震後の文化財レスキュー」というテーマで、2014 年11 月22 日に起った長野県北部地震における建築史(被災した伝統的建造物の実測)と史料・民具(個人所蔵の文化遺産)レスキューという異分野の融合の成果の報告、川副早央里氏(いわき明星大学震災アーカイブ室)が、「福島県浜通りにおける東日本大震災の記録と記憶」というテーマで福島県浜通りにおける震災記録の収集、いわき明星大学震災アーカイブ室の取り組みの報告があり、震災アーカイブがもつ可能性について論じました。

 水本有香氏(神戸大学大学院人文学研究科)は、「阪神・淡路大震災の資料の現状」というテーマで、震災関連公文書、震災関連公文書の活用の報告、筑波匡介氏(中越防災安全推進機構震災アーカイブス・メモリアルセンター)は、「震災遺構と地域の復興」というテーマで、メモリアルパークの今、長岡市山古志地区木籠(こごも)水没家屋の経緯、郷見(さとみ)庵の経緯、交流人口の拡大に向けた取り組み、中越メモリアル回廊の報告、田中洋史氏(長岡市立中央図書館文書資料室)は、「長岡市災害復興文庫の構築と発信」というタイトルで、中越大震災から11 年間の災害対応の成果として開設した「長岡市災害復興文庫」の構築・発信の過程を「災害復興関連資料」を中心に紹介し、史料保存・歴史研究の経験・教訓を「歴史」としてどのように伝えていくのかについて提言を行ないました。最後に、中村元氏(新潟大学災害・復興科学研究所)が、「日本現代史の中の災害と史料保存」と題して新潟県長岡市における戦災の記憶を伝える取り組みと歴史資料の関係を報告し、現代日本社会における災害の記憶と歴史資料の関係を論じました。

 パネルディスカッションでは、講演者がパネラーとなり、その震災資料をなぜ残そうと思ったのか、資料レスキューの報告書作成の意義、史料を残す人はなぜ史料を残したのか、木籠の水没家屋がなぜ保存されるようになったのか等について熱心な議論が交わされました。