2010.10.15　午後5時過ぎ　新潟県胎内市で竜巻による被害が発生した．16日現在での被害はケガ3名，建物被害65棟，車両被害16台となっている．
　これらの被害分布について，16日と18日に現地調査を行った．この結果，竜巻による被害は，村松浜地区を起点とする被害分布と，中村浜地区を起点をする被害分布の２つに明瞭に区分できる．これらは，同一の積乱雲塊から発生した２つの竜巻による被害である．

村松浜地区

　海岸沿いの国道113号線付近を起点として，防風林の枝折れ，畑地での物置の飛散，倉庫や車庫の屋根被害，車庫の扉の損壊，住宅の窓われ，住宅の屋根と窓の損壊，物置の屋根の損壊，果樹の被害，倒木などがほぼ直線状に分布している（分布図のM001からM011）．これらの被害は海岸沿いの最初の砂丘列を越え，砂丘間低地を東方に移動し，消滅している．被害分布の直線距離は約840ｍである．被害の幅が狭く（約20m程度）直線的であることから竜巻による被害であると考えられる．藤田スケールではF0相当と考えられる．

中村浜地区

　海岸からやや内陸に入った砂丘地帯を起点として，胎内川右岸まで，被害は約4900mにわたって連続的に分布する（分布図の1から25地点：図中のN001からN025）．被害は樹木の枝折れ，プレハブの損壊，倉庫の屋根被害，ビニールハウスの損壊，フェンスの倒壊と連続し，清水地区の工業団地では軽自動車の巻き上げや社屋の損壊が発生した．被害は胎内川右岸でいったん消滅するが（地点N025付近），直線的に東方に延長した東牧地区で再び被害が発生し，平野東縁の黒川病院付近まで被害が点在する（地点N038）．地点N001から地点N038までの直線距離は約9400ｍである．これらの被害は竜巻の目撃報告や狭い範囲での被害が直線的に延びることから竜巻による被害と断定される．藤田スケールではF1相当と考えられる．

２つの竜巻の発生

　上述のように，これら２つの地域の被害は，一連の積乱雲から発生した竜巻による被害であるが，詳細な被害分布調査から判断すると，村松浜地区の海岸部で発生した竜巻と中村浜地区の地点M001付近から地上に接地したものによる竜巻被害であると考えられる．

　新潟大学では，15から16日午前までの初期の報道のなかで，２つの竜巻が発生したという情報があったため，これを検証するため，16日午後から竜巻の経路と考えられる被害分布について調査を行った．この結果，16日と18日の調査により2つの竜巻による被害であることを推定し，HPに掲載した．一方，16日から17日にかけての一部の報道では，新潟地方気象台の調査速報を受けて，一つの竜巻による連続した被害であるとの解釈がなされていた．これは，詳細な分布調査からは，推定しにくい結果であった．

　その後，熊谷地方気象台職員の目撃情報から，２つの竜巻が発生していたことが明らかとなり，新潟地方気象台は25日に追加調査を行い，29日に２つの竜巻による被害であること発表した．
（http://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/bosai/disaster/20101016/20101029.pdf）
新潟大学の初動調査による見解を裏付けることとなった．

(文責：防災部門　卜部厚志）