新潟大学 English

新発田-小出構造線は地震断層として動いたか?

豊島剛志・小林健太(大学院自然科学研究科)

 10/25から11/29の間の数日間に、構造地質学グループは、破間川中流域の魚沼市旧守門村西名~長鳥において、新発田-小出構造線付近の地盤・建造物(舗装面等)変状を調査した。調査者は、豊島・小林・岩下(大学院自然科学研究科)、立石・大塚・和田・小安・斉藤・大橋(理学部地質科学科)、渡部(積雪地域災害研究センター)、島津光夫(新潟大学名誉教授)の10名である。地震断層の有無、新発田-小出構造線の再活動の有無を確認することが主な目的である。調査結果は、以下の4つにまとめられる。結論的には、新発田-小出構造線に沿って、地震断層が出現したと明言できないが、深部では動いた可能性があると考えられる.また,地表付近では地震時の震動による変状が認められる。

1. 新発田-小出構造線沿いの古傷は地震時に動いたか?

長鳥南西方の河岸には、新発田-小出構造線沿いの古い地震活動の痕跡(粉砕された花崗岩(断層岩類、特にカタクレーサイト)が幅数100mにわたって見出される(図1、2)が、 中越地震の時にそれらが再活動・再変形した形跡、地震断層と判断される新しいすべり面は認められない。 断層岩類を被っている段丘礫層や不整合面の変位も無い。新発田-小出構造線沿いの古傷(断層岩類)は地震時に動かなかったと考えられる。 また、段丘面形成後の累積変位も存在しないか、ごくわずかである可能性が高い。なお、西側の第三紀層との境界断層(新発田-小出構造線)は、 かつて観察されたが、現在では見ることができない(図3)

図1
図2
図3

2. 地震時の震動による地盤変状

 長鳥東方の段丘面上の農道において、アスファルト舗装の破壊(図4)とコンクリート製側溝の湾曲(図5)が観察された。 アスファルト舗装には、北西-南東、北東-南西、南北、東西などの方向に亀裂が形成され、それらに境された舗装ブロックが北西および南東に水平変位している。 これらの変状は、段丘面上における北西-南東方向の圧縮と運動があったことを示しており、地震時の地盤の震動によって形成されたと考えられる。

図4
図5

3. 地震時の横ずれ?震動?

西名南部の道路と畑において、左ずれを示す2方向の亀裂が観察された(図6)。 ひとつは,右雁行を示すN45E-N50E方向の開口性の亀裂である。その配列は北東-南西方向(N30E-N35E)に連続する。 いまひとつは、N30E-N35E方向の左ずれを示す亀裂である。 現地の地形や斜面方向からみて、左ずれを示すこれらの亀裂が地震時の重力性崩落や地すべりによって形成されたとは考えがたい。 この変状が観察された地点は、新発田-小出構造線が通過する位置にある。

図6

4. 新発田-小出構造線深部における地震活動を示す湧水?

 西名東部の西川河岸において,淡灰色粘土を含む湧水(鉱泉か)が観察される(図7,8)。 粘土は主にハロイサイトとイライトよりなる(分析者:間嶋(大学院自然科学研究科))。 11/26測定の湧水の温度は14.5度で、周りの河川水の温度は11.0度である(11/29の測定では湧水が13度、河川水が8度、12/3の測定では湧水が13度、河川水が7度)。 この地点は、新発田-小出構造線通過する位置で,3)の亀裂の延長方向にあたる。 この湧水は、断層沿いに深部から上昇してきたと考えられ、新発田-小出構造線の深部における地震活動を示しているかもしれない。今後、詳細に検討したい。

図7
図8

5. 湧水の化学組成

 組成を比較するために、4.の湧水(西名湧水)に加え、湧水付近の河川水(西名河川水)、西名新田の西川左岸の浅層地下水(西名新田地下水)、右岸の守門温泉の源泉(守門温泉源泉)から水試料を採取して分析を行った(分析者:肥塚高之・渡部直樹)。 その結果(表1)を見ると、西名湧水は、Na,Cl,S04に富み、西名河川水や西名新田地下水と比較して異常な組成を示し、むしろ守門温泉源泉に近い水であるらしい。 ちなみに、守門温泉源泉の深度は地下40mであるとのことである。 試料を採取させていただき、源泉・地下水に関する情報をお教えいただいた守門温泉や地元の方々に感謝します。

表1