新潟大学 English

建物調査中間のまとめ(工学部)

加藤大介、土井希祐、中村友紀子(工学部)

1.住宅の被害

  • 木造家屋の被害は局所的な地盤の影響が大きい。地盤のよいところはどんな建物でも大きな損傷は免れている。地盤の悪いところでは、構造的に欠陥のある建物(古い建物)が大きな被害を受けている。また、地盤そのものの崩壊による被害は、建物の欠陥とは関係なく大きな被害を及ぼしている。
  • 激震地(田麦山地区、川口町役場周辺)の木造建物については、高床式の建物の被害が少なかった。これは、高床式のRC部の構造が周辺の他の基礎構造に比べ面内剛性が(剛床仮定が成り立つ)高くなっていたことが理由である。(注:剛床というのは床の剛性が十分高いという意味で、この剛床がなりたつと、上部の構造体は弱いところが強いところに助けられる効果が生まれる。剛床がなりたたたないと、建物の一番弱いところがまず損傷し、その後、連鎖的に次々と構造体が損傷を受けることになる。)これは必ずしも高床式でのみ達成しえることではなく、べた基礎などでも同様の効果があると考えられる。なお、この効果は、鉄骨やブロック造の高床式の場合、床が鉄筋コンクリート造ならば期待できるが、鉄骨造では剛性そのものが低く変形が大きくなる欠点があり、また、ブロック造はもろく、ブロック自体が大きく損傷する危険がある。
  • 高床式のもので木造の上部構造が損傷しているものも多数見られたが、これは、土台(RC部に直接のせてある水平方向の木材)と柱の仕口部(接点)に金物が使われていなかったこと(あるいは貧弱な金物)が大きい
  • 高床式以外の木造建物では、作業場の倒壊が最も顕著であった。これらは、鉄筋コンクリート造の布基礎が多いが、これらの建物の被害はこの布基礎の立ち上がり部が出入り口部で欠損しているために、剛床が成り立たなくなった影響が大きいと思われる。

2.非木造建物(鉄筋コンクリート造、鉄骨造)の被害

  • 震度7地域においてもRC造建物の被害は兵庫県南部地震と比べ少ない。これは、RC造建物は比較的新しいものが多いこと、建物と地震動の卓越周期のずれ(神戸ほど建物に対して破壊力のある震動ではなかった)、建物と地盤の相互作用により建物基礎には観測波形ほどの大きさの入力が無かったこと、などが推測される。これらは今後の詳細調査のポイントになる。
  • 調査した鉄骨造体育館の構造被害として,屋根面ブレースの降伏後の残留変形,壁面ブレースの座屈,重層体育館のRCからSへの切替え部のS柱脚位置コンクリートの損傷等が見られるが,梁間方向鉄骨架構の構造的な被害は見られない。これは,入力地震動の卓越周期と建物の固有周期のずれ,大きな積雪荷重を見込むことによる架構耐力の余裕などが考えられる。