新潟大学 English

六日町盆地西縁断層北部と小平尾断層の地震断層としての可能性

豊島 剛志 (大学院自然科学研究科)

 10/31に名古屋大学地震火山・防災センターの鈴木康弘氏ほかによって、六日町盆地西縁断層(都市圏活断層図「小千谷」、渡辺ほか、2001)が地震断層として 活動したことが報告された。
彼らの報告をもとにして、11/7に、主に堀之内町東部および魚沼市旧広神村の小屋柄川流域で、地震断層、地盤変状の調査を行った。

 その結果、六日町盆地西縁断層の北部(新発田-小出線)および小平尾断層が中越地震の地震断層として活動した可能性は極めて低いと結論される。以下の1)から4)がその理由と調査結果である。

 ただし、小屋柄川上流や越後川口町内の地盤変状として、地すべりや重力性崩壊、人工の構造物によるとは考えがたい破断や水平短縮性の変形が認められた。
これらの成因について詳しく検討する必要がある。

  • 堀之内町下倉地区付近では、地盤変状の程度は弱めで、道路付近に埋め込まれていたマンホールやコンクリート製側溝付近の不同沈下、盛り土と本来の地盤との境界付近における不同沈下、電柱の傾動がわずかに認められる。下倉地区で六日町盆地西縁断層が通るとされている場所は、盛り土と本来の地盤との境界や地形の傾斜の急変点に位置している(図1,2)。そこにおける変状は、それ以外の場所同様、上記のような人工の構造物に由来する、わずかな不同沈下で、アスファルト舗装道路上以外では認められない。地震断層に由来する地盤変状の可能性はほとんどないと考えられる。
  • 少なくとも、堀之内町東部の六日町盆地西縁断層付近では地盤変状が集中して起こっていない。
  • アスファルト舗装の盛り上がりや亀裂が発生している場所は、地形の傾斜が大きく変わる所(傾斜の急変点)や、盛り土と本来の地盤の間である(図4、5)
  • 関越道トンネル出口付近には、盛り土と本来の地盤の境界があり、そのための不同沈下が生じている。 出口近傍では道路(盛り土側)の沈降が認められるものの、 道路周囲のコンクリート擁壁や高速道路下をくぐるコンクリート製トンネル・水路には変状が認められない(図2)。 これらの変状も、六日町盆地西縁断層北部の地震断層としての活動を支持しない。
  • 魚沼市広神の小屋柄川流域では,小平尾断層周辺の地盤変状の補充調査を行った。
    その結果は、先回の報告同様、小平尾断層の地震断層説を支持しない。
    小平尾断層通過地点に関係なく、斜面や地形の傾斜の急変点、盛り土と本来の地盤の間において、地盤変状の著しい場所がある。
    地盤変状は、小平尾断層付近で強い訳ではなく、断層から離れた地点でも多数認められる。
    重力性の崩落や地すべりに伴う正断層性や開口性の変状が多いが、アスファルト舗装の横すべりや重力性の崩落や地すべりに伴う短縮性構造も存在するので、 地震断層としての認定には細心の注意が必要である。

写真1
写真2