新潟大学 English

小千谷市,若葉三丁目で記録された中越地震の振動方向

小林健太(大学院自然科学研究科)

 小千谷市の若葉三丁目を精査した。
10/30付調査報告の続報である。
防災科研の地震計(K-NET小千谷NIG019)より西方800mの位置にあたる。

 自動販売機が東向きに90°転倒している。
その底面には屈曲した“条線”(引っ掻き傷)が刻まれている。
路面に残された脚部跡から、販売機は転倒直前まで移動・回転せず、転倒後に反時計回りに20°回転したと判断される。

 “条線”屈曲部でのペンキや地金の捲り上がりから、これを刻んだ突起物の移動センスが判る。
また、“条線”相互の切断(上書き)関係から、トレースを追跡できる。
販売機を転倒前の姿勢に復元した状態で、これを不動として扱うと、1)地面と突起物の東南東への振れ、 突き上げ成分を伴う、2)北北東への振れ、3)西北西への振れ、が識別され、この順で繰り返している。
1と2は明瞭に分離している部分と、連続的に移化・合成されている部分とがある。

 自動販売機は、期せずして設置されていた地震計(水平振動計)とみなせる。 途切れずに連続するトレースからみて、“条線”が刻まれている間、重量約300kgの販売機が、浮遊状態を維持したと考えられる。 ちょうど1G前後の鉛直加速度が想定される。 東南東-西北西方向の振動は,付近のマンホール外壁に刻まれた“条線”(10/30付報告を参照)や、 東南東に面したブロック塀が選択的に倒壊していることとも調和的である。 振動方向は、販売機の東方地下にあった震源断層の幾何学・運動学により決定された可能性が高い。

写真1
自動販売機底面の“条線”
転倒前は図の下側が東南東、左側が北北東。
横幅が16cm.
(写真をクリックすると拡大します。)