新潟大学 English

長岡高専被災状況調査報告

案内者

加藤正直教授(長岡高専)

参加者

高橋 敬雄教授(新潟大学工学部)、立石雅昭(新潟大学理学部)、藤田新一(日本高等学校教職員組合中執)、木村(新潟公立高教組書記長)、ほか、 新潟大学大学院自然科学研究科博士後期課程院生など4名

長岡高専

長岡市西片貝町888番地

 長岡駅の東、悠久山公園の北の小高い丘陵地にたつ。立地は悠久山断層(東落ちの活断層:小林他、1991)のすぐ東に位置する。 断層まで直線距離にして200mも離れていない(図:黒い実線が断層。丘陵には鮮新_更新統魚沼層(Uo)を不整合で覆って、中部更新統の御山層(Oy)が分布、 薄い黄緑(tl1)は低位段丘堆積物)。 なお、丘の北には東北東から流れてきた成願寺川が西北に流れの向きを変えている。 この成願寺川に沿ってブルーのシートで覆われた被災家屋が多い。南東に行くと被災の大きい栖吉に至る。

写真1
丘陵はNW_SEに延び、その両側(北東側と南西側)が崖になった高台となっていて 、今回、両側に押し出す形で崩れ、その引っ張りのために崖に近い建物の損壊が著しい。

高専の建物は築40年といわれる3階建ての校舎、寮などからなる。

校舎全景(1966年) 高専HPより
断層はやや白っぽく見えるグランドのほぼ北西端を通ることになる。
校舎群の一番右寄りにたつ青い屋根の建物は体育館である。
一部窓ガラスが割れたがほとんど被害はない。
上図は被災状況を示す図である。高専の方で作成されたものである。
丘陵の延びとはやや斜行してたてられているので、建物自体はWNW-ESE方向である。

 3日、10時、高専前集合。高橋先生の一行4名には門前で偶然にお会いした。 調査に同行してくださることとなった。 加藤教授の案内で、校舎・寮の外回りの被災状況並びに教授の研究室・実験室などを観察。11時半終了。

 敷地内中央に西北西_東南東方向にたつ校舎(1号館、2号館、3号館)そのものについてはひずみなどがほとんど認められない。 校舎をつなぐ渡り廊下などに一部壁の剥落が認められる。

 内部の実験室・研究室などでは書棚や、ビーカーなどガラス製品、時には分析装置なども落下、破壊、 足も踏み場もないほど散乱が激しい。 床に据え置いた分析装置などはまだ、十分使用に耐えるのではないか。棚類は転倒防止金具で止めてあっても倒れたものもある。
 一方、校舎の裏手、南西側に回ると地割れ、校舎と地盤の間のずれやセメントたたきなどの破壊が顕著である。 窓枠がひずみ、ガラスがほぼすべて割れた建物もある。特に図書館とその南西の食堂との間の地割れが大きい。食堂自体もやや南西に傾いでいる。

 その北西側では校舎裏の地盤で落差60cm前後の北西側が落ち込んだ崖が形成されている。食堂の裏手(南西側)は崖に面している。

寄宿舎の食堂裏手も地割れが大きい。
ここも崖に近く余震でさらに開いているとのことで、放置しておくとさらに食堂の損壊が進行する可能性もある。 食堂の床にはほぼNS方向に一条の亀裂(幅2~3cm、広いところで5cm)が食堂を横切っている。
各所で崖のブロック積み湯壁が破壊されている。 そのために建物の地盤が崖側に引っ張られて、亀裂が進み、建物にひずみを与えている。

 その北西側では校舎裏の地盤で落差60cm前後の北西側が落ち込んだ崖が形成されている。食堂の裏手(南西側)は崖に面している。

 以上、被災の概略を報告した。なお、外回りについては建築学の立場からの加藤先生の報告が詳しい。 南西の崖の下には悠久長職員宿舎があるが、ここはもっとも地割れなどの大きい地盤・擁壁の下でもあり、 教員は長岡市内にあたらしい借家などを借りている由である。

 被災後、ただちに文部科学政務次官が訪問、また、高専機構(独立行政法人となったが、個々の高専が独立しているのではなく、 中央に一つの役員会が置かれている)、文科からも調査に来ているとのこと。 その上で、当面、校舎内に立ち入ることは危険と判断、入校禁止、全学休講措置がとられ、自宅待機が続いている。 事務局並びに本部は長岡技科大に移されている。 現在、建物の危険度の判断、地盤の調査などが進められている由である。 北東の崖に面した坂ではボーリングも準備されているようである。

今後の課題

  

余震の危険性が尚残っている現在、早計なことはいえないが、建物の危険性(安全性)診断、修復可能性あるいは新築の判断と、 その予算の手当が早急に望まれる。特に修復に関わっては地盤の基礎的調査、地割れなどへの対策も求められる。  

これらの調査をまって、修復の可能性、安全性の判断などを経て、 建物の修復や建て替え、内部の清掃・整備、授業再開の見通しなどが明らかにされることになろう。

 

高専学生数は1000名、そのうち寮生は約4割。外国人留学生もいる。

 

授業再開に向けて、余震の危険性が減少すれば、学生たちとともに校舎内の講義室や研究室・実験室の整備が進められる。 しかし、もっとも重要なのは寮生の生活基盤であろう。 4割の学生が寮生という中で、実家でも安心して復学させることができる条件をどのように整えるのか、早急な対策が必要であろう。