新潟大学 English

越後川口町北部荒谷南方,東方における地震断層調査と崩落土砂の堆積状況

豊島剛志(大学院自然科学研究科)

 新潟大学調査団の構造地質グループ豊島班(豊島(自然科学)と坂(理,学生)の2名)は、荒谷地区東方と南方において、主に地震断層調査を行った。

調査の目的と背景

 主な目的は、東山背斜東翼に推定されている。 猪倉山断層(柳沢ほか(1986,1/5万分の一地質図幅「小千谷」))が、今回の地震で活動したかどうかを確認することである。 猪倉山断層は、西傾斜の断層として示されており、その断層を境に、東傾斜の地層の層理面の傾斜が急変している。

結論

  • アスファルト舗装の端と消雪パイプ設置のコンクリート部が盛り上がっているが、 そのすぐ横の家屋やコンクリート製側溝には変形が無い(図1)アスファルト舗装も端以外は盛り上がっていない。 逆断層ではなく、地震に伴ってアスファルト舗装が横滑りし、埋設されたパイプがゆがんだために、局所的に盛り上がった可能性が大きい。
  • アスファルト舗装が盛り上がった地点の、すぐ横、北東側の地盤に小平尾断層にほぼ平行な、地震時に形成された小規模な亀裂がある(図2) これは、盛り土の南東部(斜面下方側)にあたり、本震後に南東側が沈下しつつ開口が進んでいる(地元の方の話)。 盛り土の南東部にはコンクリート製溝が埋め込まれているが、亀裂の開口とともにその溝が南東側(斜面下方側)にたわんできている(図2,3)。 その亀裂の延長方向、北東側では新たな亀裂が盛り土中に開口しつつある。 これらの開口性亀裂は、地震に伴う地すべりや重力性の崩落によって引き起こされた可能性が非常に高い。

調査の概要

 荒谷東方の沢の上流部にあたる断層(または傾斜急変域)付近では、重力性崩落による地表面の段差や亀裂など以外、 地震時の断層の動きを直接的に示す変状(西傾斜の逆断層、あるいは圧縮性の変形構造)は認められなかった。 したがって、猪倉山断層が、今回の地震の地震性断層として動いた可能性はほとんどないと結論される。 しかし、荒谷東方の沢沿いや斜面には、地震に伴う、様々な規模の重力性崩落や地すべりが起こっている。 特に断層(または傾斜急変域)周辺では、重力性の崩落が発生し、沢沿いに多量の土砂が堆積して、小規模な天然ダムが形成されている(図1,2) 層理面沿いの重力性すべりも生じている。
 荒谷地区南方のトンネル内北部にほぼN80°W方向の亀裂が複数生じており、最大3.5cmの左ずれ変位を示している(図3)。 トンネル壁西側の変位は小さい。局所的に,コンクリート壁の剥離,トンネル内の側溝の変形も認められる。 これらが地震断層性の変状なのか、地震に伴う重力性の変状なのかは、現在の所、不明である。 また、トンネルを含む地盤全体に亀裂が及んでいるかどうかも不明である。


図1
図2
図3