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中間まとめ

10月28日 積雪地域災害研究センター

墓石の転倒率調査について

積雪地域災害研究センター墓石転倒調査チーム

墓石転倒調査の背景と目的

 平成8年(1996年)4月より、震度は計測震度計により観測されており、気象庁の震度観測点は全国各地に約600地点ある。地震動は、表層地盤や地下地質構造、地形等に大きく影響される。震度は、あくまでも震度計の置かれている地点の値であり、同じ市町村内でも場所によって震度は異なることがある。震度計の置かれていない地区や集落の震度を推定する方法はないものだろうか? 強震計が開発される前の地震の震度や最大加速度の推定には、墓石の転倒状況が利用されていた。気象庁震度階級関連解説表でも、震度5強の屋外で観察される現象・被害として、「多くの墓石が倒れる」とある。物体の転倒の力学は複雑であるが、墓地にある墓石の数は相当に多いので、統計的な処理によって、地震動の強さのおよその見当がつく。また、一般に地区や集落に1つくらいは墓地があるので、震度計の置かれていない地区や集落の震度を推定するのに都合がよい。

本調査の目的は、以下の通りである。

  • 広域的に墓石の転倒状況を調査し、強い地震動(およそ震度5以上)のみられる地区を把握する。
  • 墓石の転倒率をマップ化し、強い地震動の原因を解明するための基礎資料とする。
  • 強い地震動のみられる地区に共通の要因(表層地盤、地下地質構造、地形等の影響など)が認められれば、今後の防災・減災対策にも貢献できる。

中間報告(10月28日現在

 10月25日~10月27日に実施した調査は、長岡市~小千谷市を中心に南北50km(三条市~川西町)、東西35km(栃尾市~柏崎市)の範囲であり、のべ11の班編成により調査した墓地は約100箇所である。調査は積雪地域災害研究センターの教員1名、院生7名、理学部地質科学科の学生8名を主力メンバーとし、26日には理学部地質科学科の教員4名と学生30名の協力があった。 墓石の転倒率の高い(強い地震動のあった)地域は震源からの距離とある程度の相関が認められるが、局所的に高い値を示す箇所も存在する。今後さらに調査を進め、十分な解析を行った上で、こうした差別的な地震動の要因について検討する予定である。

建物被害の分布調査とその被害要因の調査 中間報告

積雪地域災害研究センター(卜部班)

目的

建物被害の分布調査とその被害要因(地盤構造,液状化+地盤の側方流動,伏在断層orリニアメントによる強震動)の検討

小千谷市街部

 船岡山北縁の100m幅程度に、市街の他の地域から比較すると被害が集中する。これらの被害の中には、旧流路部の軟弱地盤の液状化によるものや構造的に弱い建物(木造2F(古い)で1F店舗(間口広い)等の個々の要因が内在しているが、段丘面上の良好な地盤でも被害が見られることから、異なる地盤条件を横断して被害が見られるゾーンが認められる。このことは例えば他の地域では流路部の地盤でも被害がみられないことや構造的に弱い住家でも無被害であること、丸棒鉄筋という弱いコンクリート構造であるが他の地域では被害がないということを考えると、この被害の集中は個々の地盤条件やその他の条件が直接的な破壊要因であるが、それらをこのゾーンだけで引き起こしてる点が着目できる。
 伏在断層による強震動ということを視野に入れてさらに検討する。必要があれば,反射法弾性波探査等の現有機器による調査も行う。

川口町市街部

 市街部の被害は,木造(古)2F 1F店舗あるいは倉庫構造の木造住家としては一番弱い構造に被害が集中していた。ただし、全域ではなく段丘面の上に後背の大きな地すべり地からもたらされた崩壊性2次堆積物(地形はゆるい扇状地地形)ののっている地域に限定される。この崩壊性堆積物が分布する地域では、高率で上記の構造の住家のみが倒壊している。大きな重力加速度による圧壊ではない。倒壊した住家は震動による座屈タイプの倒壊で方向は北西方向が多い。重力加速度は上記の構造が倒壊する程度のgalでそれ以上の大きな加速度は受けていない。地盤との関係をより明らかにするために、常時微動の観測を行うと卓越周期と倒壊家屋の周期の関係が明瞭にでるものと予測される。